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ショタコンのゆりかご・3
〜ショタ作品世界のゆらぎと変転〜
ぶどううり・くすこ

第一回目ではショタコンと言う言葉の誕生とそれをめ
ぐる人々の思いを、第二回目ではショタコンと言う言
葉・それをめぐる状況の発育についてお話してまいり
ました。
今回は、そこまでを踏まえ90年代中盤から終盤にかけ
て起こったショタコンをめぐる出版・状況の流れを再
確認します。なお、筆者の守備範囲が商業出版寄りで
あるため視点のかたよりが生じる事をお許し下さい。

今回の内容は1995年辺りから1999年辺りまでに起こっ
た事情についてでありますが、時系列順ではなく、事
象順に進行してまいります。そのため単元ごとに年代
が多少前後することがございます。あらかじめご了承
下さい。

まずはショタコン商業出版をアンソロジー中心でなが
めてまいります。
94年に《ショタコンONLYアンソロジー》『TIP TAP』
(エイコー出版)が創刊され、以降《ショタコンONLY
アンソロジー》『テディボーイ』(竹書房・95.12.24
創刊)、《WE are SHO-TARO COMPLEX!!》『ROMEO』
(一水社・96.5.20創刊)、《ショタコンONLY》『COM
-IC厨子王』(松文館/97.3.25創刊)が登場します。
キャッチコピーにショタコンと冠さないものも幾つか
ございました。一例をあげれば《男の子による男の子
のための男の子本》『U.C.BOYS』(茜新社/95.12.30
創刊)でございますとか。
アンソロジーのキャッチコピーをみますと、『ショタ
コン』と言う言葉が嗜好を分類するための言葉から創
作分野の一名称として変化して行った過程が垣間見え
るような気がします。定着するまでにそれぞれ試行錯
誤があった様でございますね。ちなみに、この頃以前
も、またこの頃以降も商業出版における二次創作アン
ソロジーでは、ジャンルの名は冠されても『ショタコ
ン』とは冠されておりません。これら一群の中でも96年
5月20日に創刊された『ROMEO』は、時にショタコンア
ンソロジーの代名詞としてあげられることがございます。
約3年半の間に通巻21巻を発行した継続力がゆえにそう
呼ばれるのやも知れません。また、『ROMEO』には読者
投稿コーナーが常設されており、そこから活気がうま
れてくることもあったのではないかと思われます。その
後、ショタ漫画雑誌として『微熱少年』『少年天使』
『半熟天使』(いずれも一水社)が刊行され、そして
小説雑誌として『小説少年天使』(一水社。後に光彩
書房)が刊行されました。雑誌と言う形態で刊行され
たのは以降の歴史を振り返りましてもこの一群程度で
しょう。後に『少年天使』『半熟天使』の読者コーナ
ーからは一冊の本が派生しました。『天使のお茶会』
(98.8.15/光彩書房)と名付けられたその本は読者一
般から選ばれた人気投稿者による描き下ろし作品他を
集めたもので、その当時の空気を今に伝えています。

ここで一度立ち止まって、筆者の手元の一冊の同人誌
をみることにいたしましょう。
『THE SYOTAROH』と題されたA5版228ページからなる
この同人誌は、九十六年八月三日に漫画家・まんだ林檎
女史を発行責任者として世に送り出されました。
この本は「ショタコンとは何か」と往時活動していた
創作者及び愛好者達が自問自答した思いを詰め込んだ
考察集である、と筆者は捉えております。私情を交え
て申し上げて良いのならば、ショタコンを考えるため
の基礎文献の一冊であるとも。この本には「ショタコ
ン」と言うテーマの下、男性も女性も参加しておりま
す。が、男女比が同等と言う訳ではございません。
この本の内容…アンケート・ショタコン像についての
質疑応答・既存小説の読み解き、そして創作から浮か
び上がってくるのは、ショタコンから理想を見出す女
性側の視点、そしてショタコンに(主に性的な)心の
隙間を求める男性側の視点、と言う感じの差異である、
と筆者は読み取りました。性差を無視して考えた場合、
虚構として客観視出来るかどうか、と言う形に言い換
えることも出来るかも知れません。それは性を挟んだ
関わり方また性の描写傾向の違いにも影を落としてい
たのではないかと思われます。
この本で示された「揺らぎ」がもう少し大きくとらえ
られていたならばショタコンを取り巻く状況はまた変
わっていたのかも知れません。
『THE SYOTAROH』より象徴的な一文節を。
“そりゃエロマンガは売れるだろう!しかし、それは
ショタ物の一番卑しい醍醐味なのだ!勘違いされては
困る。ショタコンはもっとメーテルを見習え!そして
オーギュを恥と知るのだ!少年を見たら暖かい目で見
守るのだ。”(傍注一
が、時代は上記の文節とはいささか違う方向に流れて
行こうとしたようです。

司書房から刊行されたオリジナルシリーズアンソロジ
ー《SHOTA-COM COMIC ANTHOLOGY!!》『Pet-Boy's』
(97.10.25創刊)は、一つの大きな波であったと認識
できるのではないでしょうか。
当初から性描写の過激さを売りにし、成人向けの年齢
指定作品集であると暗に示していた(傍注二)このア
ンソロジーは、耳目を集めることとなりました。それ
に呼応して投稿者も集まり、投稿作品も増えていった
ようです。
投稿者と掲載作家陣が描く性描写の相乗効果で更に耳
目は集まったことでしょう。しかし、ここで一つ、世
間から影がさすという事態が起こりました。九九年に
成立した児童ポルノ法(傍注三)と言ういまだ正体が
今ひとつはっきりとしない幽霊が、その影です。現に
『Pet-Boy's』もこの幽霊に脅かされ、一時表現の自主
規制を行っていた節があります。98年10月発行の第7巻
においてその傾向は顕著でした。性描写がキスや愛撫
の暗示程度でおさえられていた作品が大半を占めてい
たのです。
読者としての筆者の主観であえて言えば作品の質はそ
れでも充分保たれていたはずです。ですが、エロとし
ては物足りない出来になってしまっていました。読者
からはエロを求められつつ、しかし規制からの束縛は
受けたくないという迷いが、恐らく『Pet-BOY's』の
中にうまれたものと思われます。
『Pet-BOY's』はその後ある程度自主規制を解禁しつつ
継続しましたが、99年4月に発行された第10巻をもって
幕を閉じました。それと前後するように当時発行され
ていたアンソロジーは次々と幕を閉じてゆきました。
前述の『ROMEO』もまた同年9月に幕を閉じ、99年が終
わりを迎える頃にはほとんどの商業ショタアンソロジ
ーが幕を閉じていったのです。

さて、ここで時代の傍証として、一つの雑誌記事を参
照にしたいと思います。
「[ショタコン・ワールド]に溺れる男たち」(『週
刊SPA!』98年2月18日号掲載/扶桑社)がそれです。
この記事はその当時増加していたショタコン男性のこ
とを分析しようと6ページにわたる記事の中であおりを
いれず、同人誌及び商業出版誌のデータを集めかなり
誠実に状況を読み物として再構成したものでした。
その記事中で同人作家・フリーライター・イラストレ
ーターと言う顔ぶれの愛好者三人による覆面座談会が
催されており、そこでは心理面描写の不足、ことに男
性作家によるドラマ描写の薄さが指摘されています。
そして、ショタとは「男のコの気持ちを描けるファン
タジー」ではないかと言う指摘もまたなされていまし
た。
これらの言葉は形こそ変っていますが、前出の『THE
SYOTAROH』において提示されていた違和感と似通った
ものではないでしょうか。
これらの弱い部分があったからこそ、ショタコン関連
の商業出版は99年末に潮が退くように消えて行ったの
ではないかと筆者は思うのです。

さて、締めくくりにショタコン同人誌即売会の流れに
ついてデータ提示を簡単に。
95年5月5日、ショタオンリーイベント『ショタケット』
の第一回が開催されました。以降このイベントは今日
に至るまでほぼ毎年5月5日に継続開催されています。
日付に就いては主催が語った言葉が記録として残って
おります(傍注四)が、初回の日付に関して言えばま
ったく偶発的なものであったとの事です。
以下箇条書き風にして後続イベント開催時期を表記い
たしますと、

・『'00.5.5.少年系!!』 
   @東京 2000.5.5
(『ショタケット』非開催年に開催されたのみ)

・『しょたやねん』
  @大阪 2001 以降継続開催
    初回のみ3月3日 
  3月第二土曜日(2002以降)

・『ショタコレクション』
    @東京 2001〜2005
   10月(2003のみ11月)

と、なります。95年以降の5年間においては『ショタケ
ット』が実質唯一のショタオンリーイベントでありま
した。そのため、ショタイベント=『ショタケット』
と認識される意識は今も大きいのやも知れません。(傍注五

商業出版におけるショタコンの空白期間と認識される
のは99年末よりおおよそ2年間。もっとも、まったくの
空白であったというわけではありません。とりあえず
発表の場はありました。
コアマガジンから発行されていた美少女漫画雑誌『ば
んがいち』(月刊/B5版)誌上において95年1月頃より
存在したと伝え聞く投稿コーナー・通称「吉田部屋」
もその一つです。見開き2ページで構成され、投稿イラ
ストの主題がショタ・少年に特化されたこのコーナー
に投稿者は集い、この空白期間においても淡々と投稿
を続けて行きました。(傍注六
さて、世紀が変わり2002年11月15日、松文館より創刊
された『ショタコミ』を皮切りにしてショタコン商業
出版は再び動き出す事になります。今回はとりあえ
ずここまでにしたいと思います。
『ショタコミ』から現在に至るまでの話は、次回の連
載最終回においてお話しいたしましょう。
その時もお付き合いいただければ幸いです。


参考文献(本文にないもの);
「ショタコンの研究」渡辺由美子
『国際おたく大学』岡田斗司夫:編/98.7.30/光文社



 『ロミオ』創刊号(96.5.20/一水社) 『ロミオ』創刊号(96.5.20/一水社)

 
 『少年天使』VOL.2(97.2.25/一水社) 『少年天使』VOL.2(97.2.25/一水社)


 『別冊 天使のお茶会』(98.8.15/光彩書房) 『別冊 天使のお茶会』(98.8.15/光彩書房)


 『THE SYOTAROH』(96.8.3/同人誌/まんだ林檎;発行責任) 
 『THE SYOTAROH』(96.8.3/同人誌/まんだ林檎;発行責任)


 『PET BOY'S』vol.5(98.6.25/司書房) ショタケットレポート掲載
 『PET BOY'S』vol.5(98.6.25/司書房)
 ショタケットレポート掲載


※2009-08-17追記。
『THE SYOTAROH』の存在はその後、

『私をコミケにつれてって!』 別冊宝島三五八
宝島社・九八年一月十六日初版


『私をコミケにつれてって!』 別冊宝島三五八

151ページにて「学術書としても最適な一冊」と言及される。
編集部の認識としては創作同人誌であった模様。


※2009.9.21追記
本編3及び本編4の時代背景及び関係者の心理状態を描写した論と
しては

『エロマンガ・スタディーズ
〜「快楽装置」としての漫画入門〜』
永山薫著・イーストプレス
2006.11.3初版

の238ページから244ページにかけて展開されている一節・
『ショタ、またはオートエロティシズム』を挙げる事が出来るだろう。
ショタと言う感覚の「揺らぎ」についても有効な解答であると考えられる。




初出;
少年系総合同人誌即売会“ショタスクラッチ3”カタログ
(2007.6.24発行)

増補改定;
ショタコンのゆりかご(暫定版)
(2007.9.16発行@CUTE☆3rd)

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