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ショタコンのゆりかご・4
〜ゆりかごは方舟に〜
     ぶどううり・くすこ

第一回目ではショタコンと言う言葉の誕生とそれをめ
ぐる人々の思いを、第二回目ではショタコンと言う言
葉・それをめぐる状況の発育についてお話してまいり
ました。
そして、第三回目で90年代中盤から終盤にかけて起こ
ったショタコンをめぐる出版・状況の流れを再確認いたし
ました。
今回は、2002年以降から現在に至るショタ表現をめぐる
状況・流れを確認し、ショタ表現の将来への展望に代え
てみたいと考えております。
なお、筆者の守備範囲が商業出版寄りであり、筆者個
人の嗜好による認識も多少入りますため視点のかたよ
りや同人誌分野からのへだたりが生じる事をお許しく
ださい。また今回も時系列順ではなく事象順に進行す
る心積もりでおります。内容によっては時間軸が前後
するであろう事もお許しください。

ショタ表現の商業出版における流れが再び動き出した
のは、2002年11月15日、松文館より創刊されたアンソ
ロジー『ショタコミ』がきっかけでありました。申し
添えておくならば『ショタコミ』には〈成年コミック〉
マーク(傍注一)は付されておりません。
次いでしばしの時をおいて茜新社より『好色少年のス
スメ』が〈成年コミック〉マークを付され2003年1月10日
に創刊、ついで『ショタコミ』の発展形として松文館
より『少年愛の美学』シリーズが同じく〈成年コミッ
ク〉マークを付されて同年6月15日に創刊されました。
そして遅れること4ヶ月、同年10月27日には桜桃書房よ
り『少年嗜好』が創刊されました。
この中でひとまず着目すべきは『ショタコミ』から
『少年愛の美学』への流れを導いた松文館の版元とし
ての姿勢でありましょう。
『ショタコミ』創刊号に記された編集部からの一言に
はこう明言されております。「ショタコミック誌の再
興を目指し立ち上がった『ショタコミ』」と。
また、『少年愛の美学』創刊号においても「ショタコ
ミック誌の再興を目指し立ち上がった『ショタコミ』
が形を変えて、『少年愛の美学』と『妄想少年』の2誌
になりました」と明言されております。
ただし、表現の形を守るためのゆらぎの現われか、両
誌ともに以下の一言がそえられていることを記憶して
おくべきでしょう。「この本の登場人物はすべて18歳
以上です」と。
この流れにおける松文館の功績はもうひとつあります。
それはアンソロジーと平行して単行本刊行にも積極的
であったということです。
ショタ商業出版の流れにおいて、〈成年コミック〉マ
ークの有無に左右されないショタ漫画専用単行本シリ
ーズを最初に作ったのは松文館であります。「ショタ
コミCollection」がそれですね(傍注二)。それ以前
にもショタ漫画あるいは小説が単行本化されていた例
は他の版元でも多々ございますが(傍注三)、広い範
囲をカバーすることが可能な専用シリーズが作られる
までに至ったと言う例は残念ながらございません。他
社のショタ漫画専用シリーズ(傍注四)は松文館のシ
リーズ設立以降に登場したと筆者は記憶しております。
閑話休題。ショタ商業出版の新たな流れは〈成年コミ
ック〉マークの付された『好色少年のススメ』『少年
愛の美学』、『少年嗜好』を中心として進行していき
ました。
この新たな波の中では雑誌形態のものが登場すること
はありませんでした。アンソロジーの性格が雑誌めい
たものであったにしても、出版形態はアンソロジーと
銘打たれた単行本の形であり続けたのです。
表現内容の幅についても一言添えておくべきでしょう。
ショタと言う表現を〈成人コミック〉のひとつのあら
われととらえた結果、少年と異性の交わりを描く作品
であっても少年を主軸とした物語展開であれば「ショ
タ」と認識されるようになり、そういう観点から編ま
れたアンソロジーあるいは単行本もこの流れの中で出
るようになりました。煩雑になりますので具体例を挙
げるのは避けますが。
またその一方で〈成年コミック〉マークの付されない
アンソロジーも多く刊行されておりました。それらの
多くは耽美を源流とするボーイズラブからの分岐と言
えるものでございます。笠倉出版社より98年1月から
2005年5月にかけ刊行された『×kids(バイキッズ)』
をはじめとする4シリーズのアンソロジー(傍注五)は
その典型でありましょう。

では、これらの拡がりの背景をしばしかえりみます。
世間の認識のサンプルとして、『現代用語の基礎知識』
(自由国民社刊)1997年版から2000年版にかけ、セッ
クスに関する若者用語として説かれたショタコンの説
明を提示しましょう。
97年版では『少年にしか興味を示さない女性。また、
そのような趣味』と説かれていたものが翌98年版では
『少年にしか興味を示さない人。そのような趣味』と
なり、99年版になりますと『少年にしか興味を示さな
い人。そのような趣味。漫画の正太郎からという説が
あるが、それ以前からあり、正しくはショートアイズ
・コンプレックスから。両目の間が近い子どもを指す
俗語』と記述されます。2000年版では『少年にしか興
味を示さない人。そのような趣味。ショートアイズ・
コンプレックスから。両目の間が近い子どもを指す俗
語』と記されておりますね。
これらの説明の正誤はひとまずおきまして、言葉に対
する認識の一例としてこういうものがあったと提示し
ておこうと思います。(傍注六
また、筆者の体感といたしましてはインターネットを
通じたショタコン感覚の広がりと言うものもあったか
と思われます。雑誌の投稿欄の代わりにインターネッ
トが作用したと言う感じでございますね。この波は日
本国内にとどまらず世界にも広がり、ショタ=SHOTAと
して拡散していきました。同人商業にかかわらず過去
の作品が再評価され、それがその当時現在の評価に火
をつける結果にもなった感を持ったことを記憶してお
ります。
ここでひとつ着目すべきはSHOTAの定義でありますね。
日本における『ショタ』はある意味非常に定義があい
まいで、時には少年と交わる相手の性別属性を限定し
ないものでありましたが、SHOTAについては最初から
少年同士ないし少年と男性と言うカップリングが想定
されておりました。そのため、後年少年と女性が交わ
ったSHOTAを表現する語としてstraightSHOTAと言う表
現が生まれたほどです。
ショタ表現を嗜好する層は意外な方面からも流れ込ん
でまいりました。成人を対象とした恋愛PCゲームの攻
略対象として普通の少年ないし女装した少年を含むも
のが散見されるようになり、そこからショタ嗜好に転
ずる層が出てきたのです。ふと気になって対戦格闘ゲ
ームの世界をかえりみれば、格闘者の一人として少年
が登場するという流れの末に、『GUILTY GEAR XX(ギ
ルティギアイグゼクス)』中においてブリジット(傍注七
と言う女装した少年が出現するようになっておりました。
図らずもブリジットの登場は、女装少年を好ましく思う
層の開拓に役立ったらしい、と筆者はネット越しに伝え
聞いております。

さて、ここで同人誌の方面に目を向けてみますと、イ
ベントに新たな動きがあったりいたしました。

『BOYS☆コンプリート!』
 @関西 2002〜2005 
 初回 京都 10月13日開催 
第2回〜第4回 大阪にて 9月中旬日曜開催

〈男のコ系同人誌即売会〉と冠したこのイベントの参
入によって、関西関東ともにショタイベントが年二回
づつ開催されるようになり、発表の場が増えることに
よってサークルの創作意欲を向上させることに一役買
ったのではないか、と思われます。
2005年から2006年になると、また状況は変化します。
関東のイベント『ショタコレクション』が2005年10月
に5回目をもって終了。ならびに関西のイベント『BOY
S☆コンプリート!』も、2005年9月に4回目をもって
終了しました。そして2006年になるとそれぞれに入れ
替わるように関東では『少年系総合同人誌即売会 シ
ョタスクラッチ』が、関西では『関西ショタオンリー
イベント CUTE☆』がそれぞれ開催される運びとなり、
発表の場が少なくなるという事態はなくなりました。
又、両イベントとも年中複数回開催という新機軸(
注八
)を打ち出し、創作発表の場をさらに広げる一助
となったのではないかと思われます。
2007年になるとさらに状況は変化します。
関西のショタイベント『しょたやねん』が3月に7回目
をもって終了し、関西におけるショタイベントは現時
点で『関西ショタオンリーイベント CUTE☆』のみと
なりました。
同人誌創作の場においても商業出版と歩を合わせるよ
うにショタという言葉の解釈は広がってまいりました。
このコラム中でことさらに触れることはありませんで
したが、耽美にはじまりJUNEを経てボーイズラブにい
たる流れの中からもショタに対するアプローチは少な
からずございましたし。(傍注九
読者の嗜好の拡がりは創作者の表現の拡がりにもじわ
じわと影響を与えたのでございましょう。

商業出版においても流れが少しずつ変わってまいりま
した。
2006年1月に『少年愛の美学』が17巻をもってひとまず
幕を引き(傍注一〇)、『好色少年のススメ』も2006年9月から
続刊が出ない状況(傍注十一)。
そう言う中で『少年嗜好』は主題・方向性を女装に徐々
に変えつつも現在続刊中という感じです。『少年嗜好』
には版元を替えつつも継続してきた(傍注十二)と言う
強みもございますね。
また、『少年嗜好』の編集氏が携わっている司書房の
アンソロジー『男の娘HEAVEN』も又女装少年を主題と
したアンソロジーでございますね。(傍注十三
これらの微妙な方向転換も流れを継続するための一つ
の選択でございましょうか。
アンソロジーの流れが徐々に退いてゆく中単行本が合
間を埋めるように刊行される流れもありますので、流
れが完全に変わったり止まったりということではない
ということではないとは思われますが。
読者の嗜好の拡散により、表現を提供する側も拡散を
狙っていると好意的に解釈するべきなのかもしれませ
ん。

とりあえずここまでまとめてまいりましたが、資料と
膝つき合わせてきた筆者にも正直なところ、ショタ表
現の明日がどういう方向に行くのか今のところまった
く見えておりません。
ブームとしてのショタがかげりを見せているのではな
いか、と問われても素直に首を縦に振ることが出来ま
せんし、表現の一ジャンルとして定着したのだろう、
と問われてもどうなのだろうと首を傾げてしまいます。
ただ、過去のブームと思われる流れと2002年以降現在
に至る流れとでは同人誌の世界における裾野の広がり
と言う点において違いはあるのでしょう。
その一点がどう作用するかによって将来の見え加減は
変化するかと思われます。

さて、都合4回にわたり、かなりの駆け足ではあります
がショタコンの歴史、25年間+αを振り返ってまいり
ました。お付き合いくださった皆様には深く感謝いた
します。
ありがたいことにこの連載コラムは後日ショタスクラ
ッチの刊行物として一冊にまとまると言うことでお話
を戴いております。
その折に、再びお目にかかれれば幸いでございます。


 ショタコミ(1)(02.11.15初版/松文館) ショタコミ(1)(02.11.15初版/松文館)


 好色少年のススメ(1)(03.1.10初版/茜新社) 好色少年のススメ(1)(03.1.10初版/茜新社)


 少年愛の美学(1)(03.6.15初版/松文館) 少年愛の美学(1)(03.6.15初版/松文館)


 少年嗜好(1)(03.10.27初版/桜桃書房) 少年嗜好(1)(03.10.27初版/桜桃書房)

『現代用語の基礎知識1997』
(自由国民社・97.1.1初版)

『現代用語の基礎知識1998』
(自由国民社・98.1.1初版)

『現代用語の基礎知識1999』
(自由国民社・99.1.1初版)

『現代用語の基礎知識2000』
(自由国民社・2000.1.1初版)


『現代用語の基礎知識2001』
(自由国民社・2001.1.1初版)

※以降『現代用語の基礎知識2009』まで確認済み。


以下参考資料

 別冊JUNE 1997年7月号『少年革命!?』 (97.7.1発行/マガジン・マガジン) 
 別冊JUNE 1997年7月号『少年革命!?』 
 (97.7.1発行/マガジン・マガジン)

小説JUNE97年12月号『ショーゲキ☆ヨイ子☆シアター』
小説JUNE12月号
1997 12 NO.90
ぷちっ子特集
『ショーゲキ・ヨイ子・シアター』
 (97.12.1発行/マガジン・マガジン)

 Coo VOL.2『完全無敵!! 子供読本』(97.1.27初版/オークラ出版) 
 Coo VOL.2『完全無敵!! 子供読本』
 (97.1.27初版/オークラ出版)

 小説GENKiBoys Vol.3『ショタコン特集』(98.3.1初版/MOVIC) 
 小説GENKiBoys Vol.3『ショタコン特集』
 (98.3.1初版/MOVIC)



2007.7.31脱稿

初出;
ショタコンのゆりかご(暫定版)
(2007.9.16発行@CUTE☆3rd)

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