ショタコンのゆりかご・追補1
主体はどちら?〜男子ショタコンの居場所〜
ぶどううり・くすこ

さて、この稿以降は追補となります。
先ずは『ゆりかご』が世に出る過程でお蔵入りとなっ
た資料に関する部分に少し光を当てると致しましょう
か。
時代としては本編2の後半辺り、90年代前半と思っ
て戴ければよろしいかと思われます。

先ず一つ目の資料として提示しますのは、

『狂的科学倶楽部』
(魔北葵/笠倉出版社/90年8月10日初版→桜桃書
房/94年9月初版初版)


でございます。筆者が確認したのは笠倉出版社版であ
ったと記憶しております。
手元のメモによりますと作中に一箇所こう言う記述が
あったとの記録がございますね。

『少年趣味』(ショタコンのルビ)

ただこの場合、愛される、つまり受動としての対象と
なっていたのは高校一年と思しき男子であり、また女
性が彼を愛するという様相を指して上記記述があった
ことから恐らく『年下趣味』の言い換えではなかった
かと考えられます。
ちなみにこの作中においては『やおい』と称する同性
愛行為描写もございました。言葉の指し示すものの言
い換えが錯綜した結果なのやも知れません。(傍注一

さて、続きましての資料は雑誌に掲載されたものです。

ANIMEDIA COMIC 
コミックPocke―ぽっけ―
アニメディア1月臨時増刊号
   (学習研究社/92年1月15日発行)
  351〜361頁掲載
  “特別企画『ショタコンのひ・み・つ』”
   芦田豊雄&スタジオライブ


が、それでございます。
この企画の大部分は後に本編3で紹介致します『TH
E SYOTAROH』に再録されたのでありますが、
割愛された部分にも実は大きな特色がございます。割
愛されたのは351頁から352頁の凡そ9割程度で
ございますか。
そこに記されていたのはショタコンの簡略な語源解説
と往時の『ショタコン』と称された女性達の遇されて
いた状況説明でありました。
語源解説のモデルに「太陽の使者」版『鉄人28号』
の正太郎君が採用されているのはご愛嬌と致しまして、
ショタコンと称される女性達がどの様に往時観られて
いたかと申しますと…あくまでもこの記事においての
描写要約でありますが、男の子を標本にしたり、或い
は一方的に愛玩する等欲求処理の道具として用いる或
いは観る人々、と認識されていた様であります。
記事中の絵柄はアニメ調に誇張されておりますので陰
惨さが漂って参りませんが、筆者が愚考しますにこの
くだりは耽美創作誌『JUNE』周辺で見られた様な
少年愛玩の様相をイメージしたのではあるまいか、と。
『THE SYOTAROH』に再録された際この記
述部分が割愛されたのは、恐らく執筆陣の男子『ショ
タコン』への配慮故でありましょう。

そして93年になりますともう一つ資料が登場します。

『がんばれ!女のコ』沢田梢
(『コミケーしょんらんど』/すたんだっぷ編/93年
1月9日初版所収)


がそれでございます。
主人公(やおい同人誌作家の少女)のライバルとなる
少女が作っているのがショタコン同人誌である、と言
う描写が出てくるのですね。
作中で語られるショタコンの認識とは

『いたいけな少年を裸にしてあんなことやそんなこと
や こーんなことまでさせる』
(作品中よりママ抜粋)

というものであった様です。
この認識は第二例と非常に似通っておりますね。やお
いVSショタコンの対立図式が描かれている事も併せ
て考えると非常に興味深い例ではあるまいかと思われ
ます。

これまで提示した三例を見る限りでは、現在ショタコ
ンの主流と目されているものと往時提示されていたも
のとを等号で結ぶ事は恐らく不可能ではないかと短絡
しそうになります。そう、この流れで提示されている
例の限りでは男性『ショタコン』発生の余地が先ず無
いのです。少年同士と言う描写はやおいの延長線上か
ら派生し得たとしても。
本編2の後半において『現代用語の基礎知識』におけ
る記述を提示致しましたが、そこでもあくまでもショ
タコンの主体は女性と提示されておりました。

そこから今日への流れがどう開かれて行ったのか。現
在の所この期間についての判断材料が見当たらぬまま
空白となっております。
少なくとも何かは存在したと思われます。そうでなけ
れば男子ショタコンの創作がいきなり発生すると言う
状況は無いでしょうから。
その辺りは追々確認してまいりたいと思います。
竜頭蛇尾の感もございますが、この稿は一先ずここで
終わります。


ANIMEDIA COMIC コミックPocke―ぽっけ―
アニメディア1月臨時増刊号


『コミケーしょんらんど』/すたんだっぷ編/93年1月9日初版


(書き下ろし/2008.2.20脱稿/2008.2.21up)

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